デジタル遺品はもう、
誰にとっても他人事ではない。

—デジタル遺品対談—

古田 雄介 氏

Border circle

古田 雄介 氏

1977年生まれ。元建設現場監督&元葬儀業のライターで、キャリアは15年。デジタルとインターネット、生老病死のつながりを中心に、デジタル遺品や死後のインターネットコンテンツの行方などを追っている。著書に『ここが知りたい! デジタル遺品』(技術評論社)、『故人サイト』(社会評論社)など。

人も集中、データも集中。

大前:
いきなり余談なんですが、ウォーミングアップになれば。本日JDCC日本データセンター協会の総会に参加してきました。関係のない話になるかもしれませんが。
古田:
面白い協会ですね。
大前:
現在、通信トラフィックは年々二割ぐらい増えているようなのですが、データセンターって日本に何ヶ所あるか古田さんご存知でしょうか?
古田:
30くらいでしょうか?
大前:
約350ヶ所なんです。
古田:
え、そんなにあるんですか!
大前:
その350の七割が関東にあるんですよ。BCPの観点からいくとかなりリスクが高いですよね。ミラーリングしていれば別ですが。
古田:
確かにデータセンターのメリットがないですよね。
大前:
遺品には直接関係ないかもしれないですが、データの分布は興味深いと思います。 全国のデータをそこに集めてるということは、人口の一極集中と同じなんですよ。
人も集中してデータも集中しているのは怖いですね。
古田:
ですよね。イメージでは土地やインフラが安いから地方に分散してるのかと思ってました。そんなことないんですね。
面白いですね。ありがとうございます。
大前:
地方にデータ分散するために国が助成金を出そうとしているみたいなんですけど、なかなか大変なようです。
ウォーミングアップ

デジタル遺品を取り巻くトレンド

大前:
デジタル遺品については古田さんと比べるとまだまだ無知ですので少しご意見いただければと思います。本日はよろしくお願いいたします。
古田:
はい、何でも聞いていただければ。
大前:
古田さんはデジタル遺品の記者ということなのですが、講演の依頼、内容の傾向など最近はどのような様子ですか。
古田:
そうですね、昨年にテレビ朝日でDeleというデジタル遺品のドラマがあったじゃないですか、御社が情報提供されていましたよね?作者さんに。
大前:
あれは「スマホを落としただけなのに」の方ですね(笑)
古田:
失礼いたしました。そういった形で、昨年テレビでデジタル遺品というキーワードをもっているドラマがヒットしたんですよ。それがきっかけでそろそろ考えなくちゃいけないよね!という人たちが、潜在需要として表に出てきて、色々教えてほしいというのが、感触として増えてきたかなと思いますね。
大前:
なるほど。都道府県別でここが多いなというのはありますか。
古田:
そこまで統計できるほどデータはないのですが、まあ関東が多いですが意外と関西からもあります。私の地元の中部はまだまだこれからっていう感じですね。やっぱり都心からなんでしょうね、きっと。
大前:
ありがとうございます。

「死の現場」と「文章を書く」

大前:
もう少し古田さんについて知りたいなと思いまして、プロフィールを少し拝見したのですが、もともと建築業界の現場監督のお仕事をされていたのに、葬儀業界の方に転職されたということなのですが、なぜ葬儀業界に転職されたのかというお話をお聞きしたいです。
古田:
そうですね。端的に話しますと、大学まであまり先々のことを考えていなかったんですね。社会に出てどうしようとか。算数と図工が得意だったのでそれでなんとなく建築家の大学に入って、そのままゼネコンに入って社会の厳しさを味わったときに「ああつまらない、自分は何をやりたいんだろう」と考えたときに、「死の現場に触れる」ということと「文章を書く」この二つが自分にとって興味のあることだなと思って、まずは死の現場に触れようと葬儀社さんで働かせてもらったんです。そして頃合いを見て、次は文章を書く方だと思ってライターの方に。それで現在に至るという感じですね。
大前:
ありがとうございます。デジタル遺品に取り組みのきっかけはその葬儀業者さんで働いていた頃にですか。
古田:
いえ、実はですね、その頃って2001年とかなんですよ。その頃確かにデジタルはあったんですが、まだデジタル遺品ということを真剣に考えようという雰囲気ではなくてですね、2010年ぐらいから私は調べ始めたのですが、その頃もまだ全然だったんです。ですが私はもともと葬儀や死に対することに興味を持っていたので、亡くなった人のインターネット上のサイトがその後どうなるのか。というのを追跡調査したいなっていうのがありまして、それは誰に頼まれたとかじゃなくて自分で調べるようになったんです。4,000件とかデータベースを作って動向調査「どうやらこの人が亡くなったらしい、その一か月後三か月後一年後どうなっているか」というのをずっと追って調べてみたというのがデジタル遺品を調べた最初です。まあ、それをやっていくうちに、だんだん世間も「デジタル遺品って怖いよね」みたいな雰囲気になっていって「じゃあ、こうしたらいいですよ。」とか「こういう対処法は実は意味ないですよ。」ということを調べて記事としてまとめて紹介する、みたいなことをやっています。
大前:
その亡くなった方のサイトを調べていくうちにわかったことなどありますか。
古田:
そうですね。世間のイメージだとデジタルっていうのは半永久的に残るというイメージがあるじゃないですか。ところが亡くなった人のサイトって10年以上残っているのは結構レアなんですよ。
大前:
そうなんですね。全く考えたことがありませんでした。
古田:
意外じゃないですか。別に誰かしらの意志があって削除されましたっていうわけでもないんですけども、サービスが終了したり何かしら遺族が気付いて能動的に代理で削除するとかもありますし、あとは有料サービスやレンタルサーバを借りていて年額を払い終わってるときに亡くなってそれから数年後に支払いが滞っていて規約違反なので削除しますという形であったりとか、様々なパターンがあります。完全に放置されていてフリーのHPとかブログとかずっと誰にも意識されることなく漂っているのは、1999年のサイトなどでたまにあるぐらいですかね。

デジタル遺品はなぜ生まれる?

大前:
弊社のデータでは40代以下の故人の方の依頼が多いのですが、デジタル遺品はなぜ生まれると思いますか?
古田:
まあ純粋に、道具を使っているからですね。例えば年賀状ってあるじゃないですか。年賀はがき。最近は下火ですけども、20~30年前はかなり沢山みんな使っていましたよね。でもさらにその100年前はあまり使われていなかった。はがきで済ますのではなくて、年賀の挨拶は関係各位のお家に行って今年もよろしくお願いしますみたいなことをしていた。でもそれだとちょっとしんどい、しんどくなってきたからはがきで済まそうよといって年賀状が増えた。つまりその年賀状が流行る前は人が亡くなったときに年賀状なんていう遺品は存在しないわけですよ。
でも、私たちの父母の世代には亡くなったときに年賀状が大量に出てきて、この人をお葬式に呼ばなきゃというのが出てくる。ところが今は年賀状も下火になってきて、何がメインになってきているのかというと「デジタル」ということなんですよね。だから実用しているのがどんなものなのかというところで徐々にデジタルのウエイトが増えている。望むと望まざると関わらず、そういう世の中になってきているからデジタルという持ち物、それが亡くなって遺品になるというのが重要になってきているのが実状かなと思いますね。
大前:
なるほど。すごく腑に落ちます。時代とともにデジタル化していくという話だったのですが、私たちの世代はデジタルネイティブと呼ばれる世代でして、デジタルネイティブとデジタル遺品の関係性はこれからどうなっていくとお考えでしょうか。データの重要性は世代別でも感覚的に違うと思います。弊社でも日に日に遺品に関するお問合せが増えている印象です。
古田:
そうですね、端的に話しますと、私は1977年生まれなのでデジタルネイティブではないんですよ。そうなってくると、思春期とか社会人になるちょっと前にデジタルが増えていって携帯もみんな持つようになってという世代だったんです。後から便利な道具がやってきたので、日常生活にバシバシ使うようになっていきました。「おはよう」とSNSでつぶやき、「これおいしいよね」と普通の昼食の写真をアップする。特別な記念日も日常も区別なく、とりあえずデジタルないしオンライン上に残していく感じですね。デジタル環境との付き合い方がちょっと近視眼的なんです。
一方でデジタルネイティブの人達は生まれながらにして携帯とかデジタルの世界、持ち物がある。そこに後から日常が積み重なっていくから、記念日は保存版にして、日常のやりとりは数秒で消えるようなサービスを使うといったみたいに自然と区別して遺していくんです。すると、長期的に残るのは記念日などのハレの日のものが中心となる。ハレとケがごっちゃになっているデジタル過渡期な世代とはそこが違うかなと思います。
ただ、自分の意思とは関係なく残るログはデジタルネイティブの人達も多く残していますし、不用意にデータを残すリスクは上の世代よりも良く分かっている。なので、「デジタルはよくわかんないからいいや」とならず、専門サービスに相談する人が多いのかなと予想します。
古田氏について

事前にできる対策

大前:
弊社にも日々色々なご相談があり、定期的に講演会などご協力させてもらっているのですが、そもそもデジタル遺品のトラブルを起こさないために、デジタル終活だったりいろんな活動があると思うのですが、事前にどのような対策ができるとお考えですか。
古田:
一番大切なのは、スマホのロックパスワードがあるじゃないですか。あれを日常的にメモして実印とか紙の預金通帳などと一緒に保管しておく方法がいいと思います。
これはもう、御社にとって釈迦に説法だと思うのですが、スマホのロック解除ってすごく大変じゃないですか。パソコン以上に大変となってくると、これから今まで以上にますますスマホの重要性は増してきます。そこにお金も入ってくるしネット銀行のアクセス履歴とかだけじゃなくてLINEpayなど財布そのものになります。ライフログなども残ってそれが情報銀行とかに流出するような、要は価値のあるデータになるのではないかと思います。
その集積物がスマホなのに、亡くなったときにロックが分からないから開けなくてどうしようもないということで深刻化しているんですね。でもロックが「この人のロックは1.2.3.4.5.6.だから」というのが分かっていればとりあえず“ドア”を開いて中身を調べられるじゃないですか。というところまでは最低限持ってきた方がいいのではないか。と思います。
ただし、パスワードを紙に書いて残すとなったら誰かに盗み見られるじゃないですか。 なので、こういったものを妻がデザイナーなので、印刷お願いしたんですけど(笑)、こんな感じの名刺大のカードを書いて、例えば「iPhoneだよ」と言って、iPhone:123456(※パスワードやパスコードの文字列)と書いてこれを修正テープで上に重ねるんですよ。2枚修正テープ重ねると、油性ペンでも完全に隠れるので普段は見られない。裏は黒いので、裏から見ようとしても見えない。というような状況で置いておく。それで、自分がいざという、万が一死んでしまったというときには、このテープを家族に削ってもらって見てもらう。もしも元気な時に勝手に家族が見たりしたら、見たなというのがわかるんですね。もう削ってあるから。このような形で防衛策をとりつつも万が一に備える。というようなことを本人がやっておけば、家族にとってはものすごく助けになるようなことを推奨しております。
パスワードカード
大前:
現物かわいいですね。意外にもアナログだなと(笑)
古田:
ほんとですか。ちなみにどのデザインがいいですか。
大前:
わたし、青が好きです。
古田:
4種類デザイン作って、講演のときとかに1枚ずつどうぞと言って渡して、人気投票みたいなこともしていたのですが、結局皆さん全種類持っていかれるからわからないんです(笑)
大前:
そのスペアキーのカードは相当な信頼関係がある家族、でしか共有できないということですね。
古田:
いえ、本当の信頼関係があれば、こういうのは書かなくても、僕のパスワードこれだからって言えたりすると思うんですよ。これを書く時点で、しかも修正テープもかけているのでなんかあったときでもまあまあ安心できる。仮にスマホは普段肌身離さずもっている。これが見られて削られているというのが分かったりしたら、ああなんか見られたなってことでパスワードを変えるっていうことができますよね。
大前:
実際に古田さんがとられている対策についておしえていただければなと思います。
古田:
基本的には困るデータってたぶん社会的なもの。たぶんお金関係と、私は自営業なので仕事っていう情報もあるわけです。今突然隕石が降ってきて死んでしまったら、明日とか今日の夜とかの予定の仕事相手に連絡をしないといけない。それが誰かわかるかというと、家族にしかわからない。家族にお願いするしかないわけですよね。なので、パソコンとかスマホとかのパスワードは家族に伝えています。
それで開ける状態になっていると、見られたくないデータを別の機会に見られるというのは嫌ですよね。なので、そういうのはあまり溜め込まないようにしているのと、不倫みたいなことはしていないので(笑)本当に見られたらまずいというのは実は無いんですよ。
なので、日頃からデジタルの持ち物も整理しているのかなというのはありますね。いざというときに共有しても大丈夫なように準備しています。もしも、なにか本当に見られたらまずいと思っているものがあったら、それはもう別にしてNASとかに保存、完全に暗号化して、二重化とかしないでしれっと「そんなものないよ」って言っていると思います。
古田氏について

終活でのデジタル機器トラブル例

大前:
弊社はこれから、金融機関や終活のサービスを行っている企業様とサービス展開を行う予定なのですが、少し終活についてお聞きしたいと思いまして…終活でのデジタル機器トラブル例などご存じでしたら教えていただければと思います。
古田:
葬儀とか遺品整理とかのことですよね。まあ葬儀の場だと、お葬式の場合まずは遺影になるような写真がほしい。それが遺族のスマホに入っていなくて、パスワードが開けなくて困ったとか。あとは親戚一同集まるじゃないですか、そのときに個人の意思が分かったほうがスムーズにいくのに、何かしらの意思や動画などがスマホやタブレット・パソコンなどに入っていて分からないというときに、どうにかしなくちゃ!というのはありますね。
それが終わった遺品整理の段階だと、意外とスマホなどは重要じゃなくて、ずっと捨て置いていた古いパソコンをどうするかというトラブルがあって、やはり終活におけるデジタルだから普通の遺品の中で、需要なウエイトを占めるものって色々あると思うんです。お金関係、権利関係の書類とかそれと同じぐらいのタイミングで重要になってくる。
昔は後回しでいいやだったと思うんですよ。昔といっても5年~10年前。それがどんどん後回しにしたらいかんぞというような形で喫緊の存在になっている。 今の財布ってクレジットカードとかマイナンバーカードとかお金だけじゃなくて色々入っている人が多いんですよ。スマホは同じ重要度になっていると思うんですよ。
そういった終活現場だから、終活に関わる業界において、結構ダイレクトにデジタル遺品は関わってくる存在になっていると思います。

遺品の扱い、日本と海外の違い。

大前:
話が大きくなってしまうのですが、日本と海外の遺品の扱いの違いについてお聞きしたいのですが、古田さんの記事を少し参照し、そこでアメリカではデジタル遺品を適正に相続できる法律や基準があるそうなのですが、適正に相続させるための技術が、フォレンジックだったり、e-dicoveryだったりそういうのがあるためだと個人的には思っていて、日本ではそういった法的な基準がないのかっていったらおかしいですけど、なぜできないと思いますか。
古田:
実はこれはヨーロッパも同じなんですけど、相続の現場で専門家が携わることが当たり前なんですよ。アメリカとかヨーロッパって。
完全、完璧な遺言書とかがなければ必ず弁護士が入って細かく相続を調べる。そうなってくるとデジタル遺品を残してしまっていたとしても調べる人はもうデジタルとかよく分からないしお金のこともよく分からないというような素人の人じゃなくて弁護士の人とか、お金、税金の流れとかを色々理解できる人が調べるわけです。そういう人たちに向けてアメリカなどのデジタル遺品に関する法律というのは士業の人たちが把握できるような形で行っているので、受け取り側もプロフェッショナルだから機能しやすいんですね。
ところが、日本は亡くなったとしても兄弟同士で争うことになっても、弁護士呼ぶとならなければあまり士業は出てこない。行政書士さんなどが色々助けてはくれてもそこまで中には入ってこないというケースが結構多いんですよね。ただデジタルっていうよりは相続の現場においてどれだけプロフェッショナルが介入するか、という国や文化の違いというのは大きいのかなと思います。

デジタル遺品サービスのパッケージ化

大前:
今後協会や団体を作る予定はありますか。
古田:
とりあえず私が頭に立って何かやるということは今のところ考えていないです。数年後どうなってるかは分からないですけどね。
大前:
デジタル遺品を扱うためにはこういう資格がいるよ!という資格制度のようなものを作れたら世の中のためになるね、という話もしていまして、そういう制度を作る際にぜひ古田さんのお力添えしていただければと考えています。
古田:
運営とかはつくづく向かないなと思いまして(笑)運営の立場じゃなければ、できることがあればもちろんご協力しますよ。
大前:
ありがとうございます。今DDL(Digital Data Legacy)という形でサービスインに向けて本格的に動いていて、サービスの内容を考えなければいけない状態なんです。
古田:
でも、もう御社はデジタル遺品サービスされているじゃないですか。TVでも有名ですよね(笑)あれをベースにして拡大していくという感じですかね?
大前:
デジタル遺品をもっとパッケージ化したいんです。葬儀業界、家財整理業界の方などにサービスを展開するときに写真・思い出パッケージとか、相続系なら遺産相続パッケージという風にパッケージ分けをしていこうという話をしていて。パッケージ化するとなったら古田さんはどういう風にしますか?
古田:
そのターゲットは葬儀社さんですか。
大前:
葬儀社さん以外にもたくさんあるのですが…
古田:
葬儀社さんをターゲットにするか税理士さんとかそういう相続系を色々調べたいという人を対象にするかで、変わってくるかなとは思うのですが。まずは、葬儀社さん関係になってくると顧客満足度を上げるためにサポートしたという意識が働くと思うので、思い出などに寄り添ったサポートをすると喜ばれると思います。具体的には最近遺影といっても自分一人だけのポートレートだけじゃなくて、家族とみんなでニコっとしているような写真などがあったりするので、そういったいい感じの写真をお葬式や四十九日に間に合わせるような形で広めるとか。あとはSNSだったり何かいい感じの名言じゃないけどもそういう為人を表すようなものをピックアップして出したりだとか。
大前:
なるほど、それはいいですね。とにかくデジタル遺品は理解しにくく、認知度も低いので。
古田:
それを一つにまとめられたりしたら喜ばれるんですよね。SNSとかを頻繁にやっている人だったら特に。そのうえで、困るのは遺品のパスワードが開けないっていうのはあるでしょうし、ネットバンクとかどのような感じでお金のやり取りをしていたのかが分からない。
電話番号の解約とかのタイミングとかも結構微妙じゃないですか。最近ではLINEと電話番号は紐づいています。電話番号だけを解約しちゃうとLINEのIDはずっとそのまま宙に浮いちゃって、電話番号は再利用されるので再利用された後に全く知らない人のものになってしまう、という問題があります。でもLINEは一身専属タイプのサービスなのでそれに対してサポートしてくれるんですね。だったら、そういったことを知っている専門家の人が「電話番号を解約する前にちょっと待ってください、LINEを調べましょう!」という助言を専門家がするとか。しかも最近LINEってLINEpayで結構な高額を貯めている方もいらっしゃいます。LINEpayもサービス解約しちゃったら、0になるんですよ。ですが遺族が「この人亡くなったからLINEpayを指定口座に振り込んでください」と言えば、それはしてくれます。
そういったアドバイスをして「LINEpayありますね、ではこうしましょう」という風に、導く。というのをバックグラウンドにしつつ、表では「思い出などをデジタルから拾いますよ」という形にすると顧客満足度は上がるんじゃないかなと思います。でも、税理士さんとかだと思い出関係よりは実務にグッと寄って海外の口座があった場合はどうするの?といったところまで全部サポートできるような形でケアしていく。という風になると思います。一般のコンシューマーに響くのは葬儀サポートの方だと思うんですけど、お金が動きやすいのは税理士系かなと思います。

死の原因など問題解決のために

大前:
私たちは自殺された方の関係団体に向けて問題解決を提案しようかという話をしています。そういった方たちはフォレンジックになるかもしれませんが。
古田:
自殺される方って結構裁判沙汰になります。自殺の理由が働いている場所だったりしたら…たぶんそういう依頼ってありますよね。ログを調べてくれとか。フォレンジックに直で繋がりやすい。
もう一つの側面としては、抹消していることが多いじゃないですか。自分はもう死ぬんだって自分で死を予期して動いているのでスマホなどはiPhoneとかだったら簡単に初期化できるから初期化しちゃって証拠もまっさらにしてしまった上で死にます。としてしまったときに残された遺族側としては何の証拠もない。どうするのこれって時に、iPhoneは無理でしょうけど、例えばパソコンのデータを削除しました、でもデータが復旧できましたとなると喜ばれるといいますか、「このデータ欲しかったんだよ」となります。
大前:
難しいところですよね。亡くなった方が個人的に消したデータを復旧してもいいのかというところが。
古田:
そうですね。
大前:
どちらも納得したうえでデータを復旧できればなと思うのですが…。
古田:
うーん。自殺って難しいのは、遺言は全体で2~3割ぐらいしか遺していないんですよ。特に残すのが多いのが、経済的な事由や人間関係とかで死ぬ場合に、恨みとか君のせいじゃないよと言って亡くなる。そのために何か伝えたいってなってくるのですが、健康問題で亡くなる方は特に何も残らない。だから、何が原因で死んだのかが本当にわからない。もしも、手を合わせるにしてもどうすれば良いのか分からないご遺族に対して、ヒントになるようなデータが見つかればそれはすごく価値のあるものだと思います。場合によっては、知りたくなかったことも出てくる可能性はあるのでかなりデリケートですが。
大前:
ありがとうございます。弊社のような現場とは違った目線大変参考になります。今日は緊張してしまって申し訳ありませんでした。
古田:
そんなことないですよ。ありがとうございました!
大前:
お忙しいところご足労いただきありがとうございました。

事業開発部 デジタル遺品サービス担当
大前 香奈

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